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被ばくするとどこかの遺伝子に突然変異ができる 可能性被ばくリスクや影響の話で、よく出てくる「可能性がある」という言葉の意味。「被ばくすると必ず突然変異ができるわけではないが、何回かに1回はできるだろう」という意味です。 があります。 「がんになる可能性を決めるのは、ある細胞の突然変異の合計数です。生まれる子供の遺伝病の可能性を決めるのは、親からもらう突然変異の合計数です。」 被ばくをすると、全体の合計数が増えて、この「増えた分」だけリスクが上がります。 私たちはこの問題を具体的に現実に解決しなければなりません。ここから、私たちが実行できるような具体的なプログラムを考えていきましょう。
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先に私たちの遺伝子の現実を見ましたが、ここではそれが具体的なプログラムでどのように表現されるのかを考えましょう。
ここにはもちろん自然放射線も含まれています。 |
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これらはすべて遺伝子を傷つけます。修復が行なわれ、失敗すると突然変異ができます。 毎日このようなことが起こっています。遺伝子の突然変異はもとには戻せないので、少しずつ蓄積して行き、図のように、生まれてから死ぬまで増え続けることになります。 1が私たちの普通の(一般平均の)人々の突然変異の増える様子です。どの組織の細胞かによって違いはあるのですが、大まかには私たちの体の細胞の突然変異はみんなこんな感じで増えていきます。 突然変異と病気のタイミング
したがって、がんを考える場合には、がんになるまで(Bの年齢まで)の突然変異がどれくらいあるかが問題になります。
遺伝的影響の場合は、受精時に親の遺伝子を子供(受精卵)に渡しますので、その時までに合計の突然変異が増えていると、子供に余計に突然変異を渡すことになります。それが遺伝病遺伝子の突然変異かどうかは分かりませんが、突然変異が多い方が遺伝病遺伝子が含まれる確率が高くなります。 したがって、遺伝的影響を考える場合には、一般的にはAの頃までに突然変異が増えていないことが望ましいでしょう。(もちろん結婚して子供を産むまでということなので、ひとりひとり異なっています。)
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被ばくすると
被ばくによって突然変異が増えてしまったために少し上の方にずれます。 あなたのイメージもこんな感じではありませんか?
この二つのラインの「差」が被ばくの影響です。具体的には「突然変異の合計の差」です。 被ばくするとそれをその後ずっと背負って行くことになる、というあなたの今のイメージ通りです。
ここで、放射線から離れて、少し見方を変えてみましょう。
被ばくのことばかり注目しがちですが、現実には突然変異を作るものはたくさんあり、それぞれがこのように作用しています。そんな生活を私たちは送っているのだということ、放射線はその中の一つにすぎないということを頭においてください。青色のベースラインの部分はそんな生活の結果でできているのです。 このように、私たちの基本として、日常のいろいろな発がん物質が、体のいろいろな細胞の遺伝子に突然変異を作り続けているのです。
一般に、発がん物質の作用する組織は、決まっています。タバコは肺が主体でその他数多く。アルコールは口腔、食道、大腸、肝臓など。食品添加物の硝酸塩やピロリ菌は胃、紫外線は皮膚。 このようなことを頭において、被ばくによる増加分をなくすことを考えましょう。どうすればこのように上にシフトしてしまったラインをもとのラインに戻すことができるかです。 突然変異の増加分を取り消す 下の図は、先ほどの図2です。 16歳で被ばくした人の30歳の時点で考えましょう。 その時から、あなたの突然変異はピンクのラインをたどります。 ところが、横方向に見ていき、“突然変異の蓄積量で比較すると”、あなたの現在の突然変異の量(ピンク30歳)は、被ばくしない一般平均の人々の35歳の時の量と同じであることがわかります(図4(2))。
これは説明のための図です。被ばくすると必ず5年分になるという訳ではありません。
被ばくするというのは、普通の人々とは別の世界に行くのでも、特別なことが起こるのでもなく、「何歳か年上の一般の人々の状態になる」ということです。
みんな突然変異が増えて行きます。 私たちは年齢に伴ってしわが増えます。老化やその他のいろいろな原因で皮膚幹細胞(皮膚細胞を生み出す細胞)の分裂速度が低下し、皮膚の代謝が低下するためです。しわの増加にも平均的なペースがあるでしょう。もし、太陽光に当たることが多い場合には、紫外線による傷害が加わって、しわを増やしてしまいます。普通より「何年分か早く」しわが増えることになります。 このようなことが言えるのは、放射線と日常生活の突然変異は合計で考えればいいからなのです。
突然変異のベースライン 普通の人の普通の日常生活によってできる突然変異の増加の様子を示していますね。 この増加の傾きというのは、ほぼ毎日の生活によって決まります。日常生活が傾きに反映されています。 しかし、それは全体平均としてみれば、ということであって、一人一人は微妙に違っているでしょう。生活が違うからです。 もしそうなら、次の図のようなこともあり得るでしょう。(図6)
しかし、あるときから、「傾きを少しだけ緩やかにして」、3の傾きで進むなら、そのうちに1と交差します。 簡単な算数ですが、生物学的な論理なのです。
「傾きを緩やかにする」というのは、突然変異ができるペース(増えるペース)を遅くするということですね。 もとの被ばくしない場合のラインに戻すには、
これが、被ばくによる突然変異の増加分を消し去る方法です。
この論理は、
「被ばくの突然変異も日常生活の突然変異も一緒に考えていい。」
「病気や遺伝的影響の可能性(リスク)は、突然変異の合計数で決まる。」 「突然変異の増えるペースは日常生活を反映している。」 という事実で成り立っています。 「被ばくによって増えた分を、日常生活から減らすことができる」 ということです。
つまり、増えていたはずの被ばくリスクはなくなったのです!
しかし、こんな疑問もわいてくるかも知れません。 何より、突然変異の増加ペースを遅くすることは、確実にあなたの遺伝子を守ることになります。
さて、このような論理、生物学的なしくみを利用することで、不可能に見えることが可能になることが分かってきました。 |
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