なぜ、この論理が成り立つのか?
原発事故の後、ヤマトシジミの変異体、そしてアブラムシの変異体も見つかっています。 原発事故との関連性を証明することは容易でないでしょうが、昆虫たちも被ばくしたことは確かです。
私たちは、どうすればその影響、リスクをなくすることができるかを考えているのですが、この昆虫たちも同じように、被ばくリスクをなくすことはできるのでしょうか?
昆虫の場合には、無理です。
遺伝子の突然変異の発生に関して、人間の場合と他の生物の場合の本質的な違いがあるからです。
他の生物、例えばヤマトシジミでは、被ばくしてしまった場合には、どうすることもできません。それが問題として出てこないように、それこそ神頼みするしかありません。 子供が被ばくしても昆虫のお母さんは何もしてあげられない。なぜなら、昆虫の生活には「後から遺伝子を防御できる」しくみ、状況がないからです。
なぜでしょうか?
自然の生物には、突然変異の増加を日常生活でコントロールできる余裕がほとんどないからです。みんな少しずつ突然変異ができるかもしれませんが、個体差を意図的に作り出すことはできないからです。
昆虫たちの生活は、必要不可欠で重要な因子だけでできています。 活性酸素、DNA複製時のミス、自然放射線ぐらいしかない。これらはどうにもできない“避けられない突然変異”です。これは減らせません。
私たちのような「余計な突然変異」がありません。すなわち、「勝手なことをして、変異原を作り出し、突然変異が発生しやすくなった日常生活」がないのです。一般に、人類文明とか、文化とか呼ばれるようですが。
タバコを吸ったり、酔っぱらったりしませんね。美味しくて体に悪いものを好んで食べません。肥満になりません。勤勉に一生懸命、自然の摂理に従って生きているだけです。
食べるイモムシや樹液にそれほど変異原が含まれるとは考えられないし、食べる内容もそれほど違うとは思えない。
“個人の勝手な生活によってできる余計な突然変異”がほとんどないために、努力でコントロールできる部分がないのです。
したがって、ベースラインを低下させることができず、できてしまった突然変異はそのまま増えた状態のままです。
一方、ヒトでは、大きなチャンスがいくらでもあります。
何しろ、ヒトの突然変異のほとんどが、“生存や生殖とは関係ない余計な突然変異“と言ってもいいぐらいです。 また、ご存知のように、美味しいものはからだに悪いことが多いですね。美味しいものは、たいてい発がん物質や変異原、そして病気の原因となりがちです。そして大切な栄養成分の低い場合が多いでしょう。
これがチャンスを作ってくれるのです。 無数の「文明と称される余計なこと」でほとんどの突然変異が発生しているのが人類の現実です。
人類はコントロールが可能
遺伝子の突然変異は、発がん物質と防御機能のバランスにより発生ペースが決まります。発がん物質を減らすことには大きな効果があります。かつてアメリカのモルモン教徒の疫学調査では、モルモン教徒ではがん発症率が国民平均の数分の1から10分の1にまで低下していることがわかりました。ライフスタイルによりこれだけの効果があるのです。 しかし、私たちの生活から発がん物質を減らすことは難しいでしょう。美味しいものを減らしたり、快適な生活を諦めたりできません。私たちは、人類の証とも言えるこの生活を手放すことはできません。
そこで、突然変異をコントロールするもう一方の因子であるDNA防御機能を高めることで、このバランスを変化させて突然変異の発生ペースを低下させようというわけです。
このプロジェクトの具体的な日々の目標は、一般平均の突然変異の増加ペースより遅くすることです。目指すのは、一般平均レベルに戻すことです。言うまでもなく、被ばくリスクというのは、一般平均より増えた部分のことですから、それを消去して一般平均に戻すことができれば、被ばくリスクはゼロです。
後で示す様々なデータから、特定の栄養成分の摂取により、DNA防御機能を高めることが可能であることが分かったのです。私たち一般平均の人々の防御が十分に高くないために、追いつくことができるのです。 そうです。 昆虫はみんな最大限で生きていますので、競争して追いつくことは不可能なのですが、人類にはそれが可能なのです。 DNA防御機能はまさにそのような、向上の余地のある機能の一つであり、栄養摂取の小さな努力によって、通常の生活をしている一般人より防御を高めて、突然変異の増加ペースを一般平均より遅くすることが可能なのです。これが人類のお母さんが子供のために何かをしてあげられる理由です。
このリスク低減プログラムの食生活によるDNA防御機能の向上は、増加させるというより、おそらく現代の食品の低下した栄養価を補ったり、調理加工によって失われたものを補給したり、偏った栄養摂取を修正する努力という意味合いが大きいのかもしれません。 それが防御機能を向上させて、突然変異を減らすのです。
では、いよいよ、このプロジェクトの核心である「遺伝子防御プログラム」に進みましょう。 |