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私たちの細胞の遺伝子には、普通に生きているだけでも、たくさんの突然変異ができているということを知りました。 突然変異は、私たちが文明生活を享受しているという利益に対して、支払わなければならない生物学的な税金でしょうか。 これが私たちの普通の状態です。 被ばくすると、そこに放射線による突然変異が追加されます。 放射線がやることは特別? このリスクをゼロにする論理の大前提は、 遺伝子防御のしくみの理解は、ここからです。 生きている以上は、突然変異ができるのはしかたないことは分かります。放射線も突然変異を作るので、突然変異が少し増えます。 では、放射線はタバコや酒、焼き肉と同じですか? いいえ、私たちはそうは思っていませんね。 放射線は決定的な問題を起こすというような印象です。 タバコは悪いと知っていても、吸っています。何となく分かるような気がするからです。悪いことも、”自分で分かる範囲の悪さ”という感じでしょうか。 しかし、放射線というのは特別に怖い印象があります。 遺伝子へのアクセス まずどんな発がん物質でも、作用するには細胞のDNAのところにたどり着かなければなりません。 体内、組織内、細胞内を移動する必要はなく、弾丸が通り抜けて行きます。 これは特別な性質といえます。 そして、全身被ばくの場合、放射線は一度に体の”すべての"細胞のDNAに作用することができます。届かないところはありません。したがって、他の発がん物質があまり入って行けない細胞のDNAにも作用します。
良い例が、甲状腺がん(甲状腺細胞)と白血病(骨髄細胞)です。 被ばくと言えば白血病・甲状腺がん、と言われるのは、このような理由からです。 傷の作り方 さて、DNAにたどり着いた発がん物質は、DNAに作用します。 これも確かに特別です。 分子の結合は、普通は化学反応によって切られます。これはエネルギーに基づいた電子の自然な移動による洗練された方法です。普通の発がん物質の作用は主に化学反応です。最も強力な活性酸素ヒドロキシルラジカルでさえ、DNAから水素原子を引き抜いたり、付加したりするのは化学反応によるのです。 しかし、放射線は電子をはじき飛ばして、結合を物理的に切って(壊して)しまいます。このようなことができるのは放射線しかありません。この点は特別だと言えます。 傷のタイプ では、できる傷のタイプはどうでしょうか? 突然変異のタイプ 放射線は特別な突然変異を作るのでしょうか? 放射線の傷や突然変異は一生残るのでしょうか? ターゲット遺伝子 放射線が特に重要な遺伝子を狙い撃ちするということはありません。無差別であることが放射線の特徴だと言ってもいいぐらいです。 生体影響 その結果、生体への特別な影響があるのでしょうか?
以上のように、確かに放射線は透過性など特別な部分はありますが、生体影響という結果で言うと、普通の発がん物質と違いがない、ということになります。 これまで放射線は安全か危険かというだけの空疎な議論しかなかったために、人々の理解レベルは低いままです。少しずつ生物学的な理解度を上げて行きましょう。上がるにつれて、リスクを生物学的にコントロールできることが確信に変わって行きます。 ここで、「いや、チェルノブイリではとんでもないことが起こったと言われているし、そんな報告もある。やはり放射線は特別に怖いのでは?」と思われた方も多いでしょう。 起こったことは事実かもしれませんが、それは放射線が私たちの知らない特別なことをしているのではなく、特別に大量に被ばくしたからです。 |
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いろいろな角度から検討しましたが、放射線が作る突然変異は、日常生活の普通の発がん物質が作る突然変異と“同等”です。同等というのは、同じ危険性という意味です。 問題は突然変異の合計数 放射線は特別に考えなくていいことがわかりました。 私たちの遺伝子には突然変異はたくさんありますが、これまでの生活の何によってできたのかは分かりません。 ある人が普通より突然変異が少し多いとすると、将来病気になったりする可能性が高いのでは?と考えますね。
つまり、病気になる危険性(リスク)を考えるなら、放射線の突然変異はほかの突然変異と「置き換える」ことができるということです。 がんは、がん遺伝子やがん抑制遺伝子と言われる特別な遺伝子に、突然変異が10個も10数個もできないとなりません。できた細胞からがん細胞になっていきます。 わたしたちは常にこうしたがん細胞やがん細胞になりつつある細胞をたくさん持っています。それが現実です。これが私たちの「普通」なのです。 さて、そんな私たちが被ばくしました。普通の人です。 もし、その細胞にすでに突然変異がたくさんあり、あと少しでがん細胞が完成するとしたら、放射線はその”少し”をやってしまうかも知れません。被ばくすると、そんな普通にある細胞ががんになりやすいのは当然です。 どうですか?このすじみちは避けることができませんね。 いやが応でも、放射線の突然変異は他の突然変異と一緒になって働かざるを得ないのです! |
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私たちの被ばく影響の理解は大幅に進み、リスクをコントロールできる準備が整いました。 |
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